「マチズモを削り取れ」(武田砂鉄さん)の書評と解説|単行本/文庫本/Kindle

うさぎ

「マチズモ」という聞いたことのあるような、それでいて具体的なイメージが湧きづらい言葉に対して、日常の場面を例に挙げながら解説している書籍「マチズモを削り取れ」を紹介します。

「マチズモを削り取れ」の概要

著者|武田砂鉄さん

武田さんは出版社勤務→ライターとして新聞への寄稿や数々のメディアで連載を執筆。時事問題やノンフィクションから、インタビューまで幅広いジャンルを執筆・編集。

『紋切型社会――言葉で固まる現代を解きほぐす』で第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞。他の著書に『日本の気配』『わかりやすさの罪』『偉い人ほどすぐ逃げる』などがある。

事件や事故、社会問題への違和感を追求しており、近年はラジオ番組のパーソナリティも務める。

あらすじ

路上、電車、学校、オフィス、トイレなど、日本の公共空間にはびこる〈マチズモ=男性優位主義〉の実態をライターが徹底調査!

ジェンダーギャップ指数、先進国でぶっちぎりの最下位――「関係ない」はもうありえない。

夜道を歩くことの恐怖、通学・通勤中の痴漢被害、発言権を奪われる不条理……最も身近な日常の場面から、変わらないこの国の「体質」をあぶり出す。

目次

目次は以下の通りです。キャッチーなワードも多いため、気になる章から読んでみることをおすすめします。

一章 自由に歩かせない男
二章 電車に乗るのが怖い
三章 「男/女」という区分
四章 それでも立って尿をするのか
五章 密室に他人が入り込む
六章 なぜ結婚を披露するのか
七章 会話に参加させろ
八章 甲子園に連れて行って
九章 体育会という抑圧
一〇章 寿司は男のもの?
一一章 カウンターと本音
一二章 人事を握られる
おわりに

たくさんの章があるように見えますが、具体事例も多く、読みやすい文章であるためさくさく読み進められます!

「マチズモを削り取れ」を読んでみた書評・感想

本書内から一部抜粋・引用しながら感じたこと・気付いたことをまとめていきます。

「考えすぎないから、いまだにこんな感じなんだと思う」

男性が有利で、優位な社会。お土産屋さんのちょっとした文言から、作家のSNSの発言まで、向き合って考えているようで、考えていなかった場面の紹介。実際は変わらない方が男性としては、引き続き優位な世の中になるから、と言う一文に深く納得。

こうしたミニマムな「マチズモ」を放置し続けた結果が現社会。気づかないようで着実に顕在化している違和感をひとつずつ、丁寧に削っていくことが大切だ。

「ただ街を歩くだけでも、抱えている恐怖が男女間で異なるように思います」

駅のような混雑している場所を歩く際、すれ違うためにはお互いの配慮が必要。だけど、自分を世界の中心に置き、まっすぐ歩き続けるのは決まって男性、挙げ句の果てにはわざとぶつかる(2018年の新宿駅)ような男性も出てくる始末。

好きなものを一人前食べる。思ったことをそのまま伝える。道を歩く際には一方的にではなく、互いに譲り合える。当たり前の行動や主張が、平等に日常の中でできるためには、何が必要か改めて考える機会となりました。

「均等形成済平等幻想」

男と女。わかりやすい区別手法の一つだが、その内にはまだまだ差別が存在している。

  • 「ガラスの天井」で語られるように、地位や役職(ひいては給料)が一定ラインで頭打ちに。
  • 客室乗務員や受付がいまだに女性が多い
  • 大学受験で不正に得点が操作され、正当な結果を得られない

男女平等2.0に向けて、「変わったほうがいいよね」から「変わらないといけないよね」に変化していく必要がありそうです。

「自分はこうだったんだから、お前たちもこうであれ」

強者の論理が通る(俺ができたからできるはずだ、努力が足りないのだ)体育会系(運動部)において、経験の押し付けになりすぎるあまり、相手のことを見ることを忘れていないか。監督やコーチだけでなく、会社に当てはめれば上司も同じで、一人のヒトとして向き合うことが重要である。

まとめ

「マチズモ」というある意味で抽象的な言葉を理解するためには、具体事例が豊富に紹介されている「マチズモを削り取れ」を読むことがおすすめです。

身近に溢れているたくさんの「マチズモ」を、少しづつでも、一個だけでも削り取ることが、社会の変化につながることを認識できました。

気になる方は、単行本・文庫本・Kindleのすべてで販売されているため、自分に合った方法で読んでみてください。

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