社会影響
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「ハンチバック」作者が提唱する読書文化のマチズモとは?健常者優位主義を解説

うさぎ

ハンチバックとは?

第169回芥川賞を受賞した、市川沙央さんの書籍である。

主人公の井沢釈華はグループホームで暮らす身体障害者。背骨が湾曲していることから、自分の足で歩くことはできない。

十分な不動産収入はあるが、妊娠への渇望をSNSへ、18禁小説をサイトへ投稿することでお金を稼ぎ、寄付を繰り返していた。そんなある日、主人公は多額のお金を引き換えに介護士へ精子提供を依頼するが、果たして。

「本を読むたび背骨は曲がり肺を潰し喉に孔を穿ち歩いては頭をぶつけ、私の身体は生きるために壊れてきた。」井沢釈華の背骨は、右肺を押し潰すかたちで極度に湾曲している。両親が遺したグループホームの十畳の自室から釈華は、あらゆる言葉を送りだす――。

ハンチバック作者がマチズモに言及

ハンチバックの中では「読書文化のマチズモ」や通常エイブリズムと訳される「健常者優位主義」を「マチズモ」と訳したことが話題となった。

主人公と同じく著者も先天性ミオパチーという難病を患っており、紙の本を読むことが難しい状態。そんな思いが表現された一説がある。

厚みが3、4センチはある本を両手で押さえて没頭する読書は、他のどんな行為よりも背骨に負荷をかける。私は紙の本を憎んでいた。目が見えること、本が持てること、ページがめくれること、読書姿勢が保てること、書店へ自由に買いに行けること、――5つの健常性を満たすことを要求する読書文化のマチズモを憎んでいた。その特権性に気づかない「本好き」たちの無知な傲慢(ごうまん)さを憎んでいた

電子書籍と比較し、紙の本が優れているとされる文化において一石を投じる内容だった。

受賞記者会見で市川さんは「重度障害者の受賞者も作品も『初』だと書かれるでしょうが、どうしてそれが2023年にもなって初めてなのか、みなさんに考えてもらいたい」とも述べていた。

読書における見えない差別、もしくは苦労に気づくことなく日々過ごしている人がほとんどだろう。しかし、紙で、電子書籍で、そして最近では耳でも読書体験ができることは当たり前ではなく、文学に触れる機会が健常者に比べて障害者は意図せずとも少なくなってしまう環境があったのだ。

まとめ

読書におけるマチズモ。なかなか考える機会すらなかった問題に対して向き合う良い機会となる一冊。ぜひ一度読んでみることをおすすめします。

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